第4回平間塾オンライン写真展

風間 暁(AKATSUKI KAZAMA)

Inner child

父は私を捨てた。あの日に父が抱きしめたのは、娘である私ではなく、ベースギターだったのだ。あれ以来、私にとってのベースギターは、私から全てを奪っていく憎しみの対象となっていた。
それなのに、いつからだろう、あの身体の芯まで響くような低音を愛おしむようになったのは――。
何を聴いてもベースラインを探し、もっと低いのが欲しいと求め続ける。
あんなに憎んだベースなのに、脳を、心をダイレクトに揺さぶる音には、噴き出る愛が止まらない。
それが余計に憎く、煩わしいのだ。
アンビバレンスに葛藤して、矛盾だらけの自分を裁く。
その繰り返しで生まれる負のグルーヴが、今の私をつくってきた。
――私は、ベースを……いや、父のことを、一体どう思っているのだろう。
愛と憎しみをぐるぐる回って、「本当」の気持ちなんてもう、皆目見当もつかないや――。
そうして、答えが知りたくなった私はベースギターを抱き、父によく似た容姿の自分を撮った。言語で理解した心象の更に向こう側を、写真なら見せてくれると信じて。

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